売掛金の多重譲渡にならないように気を付けて

今回は売掛金の多重譲渡は、悪意がなく勘違いによっても起こる可能性があることを考察してみたいと思います。

とある企業の経営者であるAさんは、300万円の資金調達が急遽必要となり、ファクタリング会社B社へ1000万円の売掛金の買取依頼を行いました。
資金需要は300万円ですので、300万の買取申し込み、売掛金は1000万です。
売掛先にも問題はなく、B社は希望通り300万の資金調達に応じてくれたため、15%の手数料でファクタリング契約を締結しました。

売却した売掛金は300万?それとも1000万?

売掛金を買取する際、ファクタリング会社は売掛金に対して掛目を設定します。
この掛目というのは、簡単な言葉にすると査定した売掛金の買取上限値のようなものだと考えればわかりやすいのではないかと思います。
これが85%だったとすると、この1000万円の売掛金を資金化するのに、最大850万円までなら対応可能、ということになろうかと思います。
つまり、今回A社長が売却した売掛金は最大で850万円までの資金化が可能でしたが、A社長が必要としたのは300万円であったため、300万円として買取を行い、資金化を実行しました。
このため、決済時にA社長が支払う金額は300万円+手数料15%の345万円、という取引となります。
ファクタリング会社が商品説明で掛目と手数料という言葉で説明を行うのはこのようなケースがあるためと思われます。

この取引にあたり、A社長はファクタリング会社B社に対して売掛金の売買契約書を結び、債権譲渡登記の書類や債権譲渡通知書への押印を行いましたが、
2社間取引で契約を行ったため、これらの通知や登記は留保された状態となりました。
この時点で、1000万円の売掛金の所有権・請求権は契約したB社へ移動していることになります。
この場合、売掛金のうち資金化したのが300万、留保金が700万という扱いになるはずです。

ファクタリング契約中に想定外の資金ショートが起きたら?

A社長は300万の資金調達を行い、事業を進めていましたが、想定外のことが起こり、追加でもう300万円の緊急資金が必要となってしまいました。
その際、たまたま目にしたファクタリング会社C社のご案内で、「手数料5%で取引可能」という好条件のプランを見つけました。
A社長は、「この前売ったのは300万だから、同じ請求書でもう300万を調達すれば良いだろう」と考え、C社へ前回と同じ1000万円の請求書を査定に出しました。
審査が無事通り、契約となったのですが…
実はC社の手数料5%での2社間ファクタリングは、債権譲渡登記が必須の条件となってしました。
急いでいたA社長は内容を充分に把握しないまま契約を結び、買取が実行されてしまいました…

このあと何が起こる?

ファクタリング会社は、売掛金の保全やチェックのために、買い取っている売掛金について他社から登記が入ったりしていないかどうかを確認することがあります。
B社がC社の登記に気が付かなければ、恐らく月末の決済は2社に対して何の問題もなく終わるでしょう。
1000万の売掛金に対して資金化を行ったのは総額で600万である訳ですから、通常であれば問題なく決済できます。
しかし、B社がC社が債権譲渡登記を行ったことに気づいてしまったらどうなるか?
B社にとっては、自社が買取ったはずの売掛金に他社の登記が付いたわけですから一大事です。
2社間取引を即刻解除し、売掛先を交えた3社間取引に移行して売掛金の回収を行わなくてはならなくなります。
そうなると売掛先に債権譲渡通知書が送付され、売掛先に連絡が入り…
全く問題がなかったはずのファクタリング利用が、一転して優良な取引先を失ってしまうかもしれない事態に発展してしまう恐れがあります。

ではどうするべきだったのか?ファクタリング契約中にさらに資金が必要になったら?

A社長が考えた、「この前売ったのは300万だから、同じ請求書でもう300万を調達すれば良いだろう」は非常に起こりやすい勘違いです。
この場合、本来A社長はどうするべきだったのでしょうか?

  1. 元々契約していた業者であるB社に、留保金の追加買取を打診する
  2. 全く別の売掛金をC社に売却する

このどちらかの方法を選んでいれば、上記のようなトラブルは起こらなかったでしょう。

ファクタリング契約前に、追加の買取の可能性については確認しておきましょう

ちゃんとしたファクタリング会社であれば、売掛金の買取査定の際に掛目をきちんと算出していますから、契約中の想定外の資金需要に対しての追加買取には応じてくれます。
手数料を日割りで引き直して再計算し、契約書の巻き直しが必要になると思われますが、一番望ましいのは契約するファクタリング会社を増やさずに追加の買取を行ってもらうことです。
売掛金の内容や貴社に問題がなく、買取金額が増加すれば手数料の料率が下がる可能性もあります。
審査能力がないファクタリング会社だと、このようなフレキシブルな対応が行えませんので、業者を選ぶ際に以下のようなことは確認しておきましょう。

  1. この請求書は最大いくらで買えるのか?
  2. 今回必要なのはその一部だが、急に必要になった場合は追加の買取に応じてもらえるのか?

これをきちんと確認しておけば、今必要な金額と売掛金の金額に大きな乖離があるものを売却したとしても、いざという時はすぐに残りの留保金を資金化することができます。
こういった対応は売掛金の買取査定と契約のノウハウが豊富な業者でないとできない可能性があります。
中小企業の資金繰り事情に合わせて、契約中の不測の資金需要にもきちんと対応してくれる業者を選ぶようにしてくださいね。